は、18歳のときから今にいたるまでずっとボブ・ディランの大ファンである。このことは「エルヴィスからビートルズ、そしてボブ・ディラン」で詳しく書いた。ボブ・ディランのコンサートには、これまで3度行ったことがある。1度目は、私がまだ日本にいた2001年、福岡でのコンサートだった。

2001年3月9日 サンパレス福岡

私は当時23歳、ボブは60歳の誕生日の約2ヶ月前だった。会場はサンパレス福岡。私と同じ時期からボブ・ディランの大ファンになった母と、大学の音楽サークルの後輩と3人で熊本から観に行った。会場は椅子のある大きなコンサートホールで、我々の席はホールの真ん中あたりだった。英語のMCで紹介され、ボブ・ディランが登場。観客からは大きな拍手と歓声。私も母も、ファンになって5年目で初めての生ボブだ。

1曲目は軽快なブルーグラスの曲。聴いたことがなかったが、後で調べると「Hallelujah, I’m Ready to Go」という曲で、ボブのオリジナル曲ではない。ボブはこの曲を、1999年から2002年にかけてのコンサートで合計37回演奏したそうだ。いきなり知らない曲から始まったので、やや拍子抜けしたのは否めない。しかし今思えば、この時期しか聴けない珍しい曲を聴くことができてよかったということだ。

至福のタンバリン・マン

1曲目が終わり、すぐに2曲目のイントロに入るが、また何の曲か見当もつかない。しかしこの私の不安は、ボブが歌いだした瞬間、「ワアーッ!」という観客の歓声と拍手とともに消えた。私が、ボブ・ディランに限らず今まで出会ったすべての曲の中で最も好きな曲、「Mr. Tambourine Man(ミスター・タンバリン・マン)」だった。

私も母も絶叫に近い声をあげて喜んだ。

軽やかでメロディアスなオリジナルバージョンとは異なり、重厚で、まるでお経でも唱えるように歌っていく。ボブによる長いギターソロもあり、素晴らしいの一言。あとで新聞で知ったことだが、今回の日本公演で「ミスター・タンバリン・マン」を初めて演奏したのがこの日だったらしい。ラッキーだった。

それにしても、なんという大胆なアレンジだろう。以後の曲もそうだが、イントロだけではなんの曲かわからないものが多いのだ。そして、この時期のボブのライブパフォーマンスの特徴だが、ギターソロを積極的に弾いてくれるのも嬉しい。

往年の名曲たちを堪能

その後ボブは、「Desolation Row(廃墟の街)」、「Just Like a Woman(女の如く)」、「Masters of War(戦争の親玉)」など往年の名曲を次々と演奏していく。ハーモニカのソロでは大きな歓声が起こった。至福の時間だった。9曲目の「Don’t Think Twice, It’s All Right(くよくよするなよ)」は、特に素晴らしかった。軽快なリズムに乗せて、優しくささやくように歌っていた。この曲はイントロですぐにわかった。

アンコール前最後の曲の「Rainy Day Women #12 & 35(雨の日の女)」では、観客が立ち上がり、ステージ前に押し寄せた。我々も負けじと前に行った。母はこのときに何度もボブと目が合ったらしい。

最高潮でフィナーレへ

アンコールで再登場後2曲目は、私がボブにはまったきっかけになった曲、「Like a Rolling Stone」だった。震えるほど感動した。そして最後の曲は、フォーク時代の代表曲「Blowin’ in the Wind(風に吹かれて)」だった。私はこの2曲のライブバージョンといえば、ライブアルバム「Before the Flood」に収録されているバージョンが最も好きだが、生で聴いたこの日の「Like a Rolling Stone」と「Blowin’ in the Wind」は、また格別だった。

2度目のボブのコンサートは、2010年11月のニューヨーク、そして3度目は2014年4月のホノルルだ。いずれも素晴らしいパフォーマンスだった。

﨑津 鮠太郎