供の頃から、地元熊本の川や湖などの淡水の環境と、そこにすむ魚たちがとにかく好きで、フナ、コイ、ハエ(オイカワ)、ハヤ(ウグイ)などの魚釣りに夢中だった。また、絵を描くことも同じくらい好きだったので、図鑑をみながらヤマメ、イワナ、アユ、タナゴなどの日本の川魚の絵を無数に描いた。大学生になり自分の運転で遠出できるようになってからは、特に緑川水系と菊池川水系の川や湖に魚釣りに出かけた。野鳥には、特に関心はなかった。

きっかけは野鳥の映画

大学を卒業後、ハワイに移住した。ハワイではどういうわけか川魚や、川辺の環境に惹かれなかった。あれだけ好きだった魚釣りも、ハワイでは一度もやったことがないし、やりたいと思ったこともない。

ハワイ暮らしが始まって1年くらい経ったある日、友人に誘われて4人で映画を観に行った。世界のいろんな渡り鳥の長い旅を追いかけるドキュメンタリー映画だった。映画のなかの鳥たちの美しさに感動した私は、すぐに書店に行ってハワイの鳥図鑑を買った。

図鑑をみて、ハワイには思った以上にたくさんの種類の野鳥が生息していることを知った。それらの野鳥の多くが、地球上でハワイにしか生息していない固有種で、しかもそれらの多くがすでに絶滅したか、絶滅の危機に瀕していることも知った。

なかでも、森の野鳥たち、とくにハワイミツスイ類の美しさに魅了された。普通にホノルルの街中で暮らしていたら、まず見かけることはない鳥ばかりだ。いつの日かこの図鑑に載っているような美しいハワイミツスイをこの目で見てみたいという、憧れのような思いを抱くようになった。

野鳥に興味を持ちはじめると、ホノルルの町中の身近な場所にも、ハワイならではの鳥がいくつかいることがわかるようになった。マヌオクーという真っ白なアジサシは、ハワイではホノルルの都市部のみで見られる在来種で、その可愛い顔に一目惚れした。8月にはコーレア(ムナグロ)などの渡り鳥が北から遠路はるばるやってきてハワイで越冬し、4月に再び北に向かって旅立つまで観察するのが毎年の楽しみになった。このマヌオクーとコーレアを中心に、写真も撮るようになった。

マヌオクー(シロアジサシ)

くるりとした目が可愛らしいマヌオクー(シロアジサシ)

ハワイミツスイとの出会い

そしてついに、それまで“図鑑の中でだけ会える鳥”だった、ハワイミツスイに出会う日がやってきた。

ワアヒラ・リッジ

ワアヒラ・リッジよりホノルル市内を望む

野鳥と同時にハワイの花や木にも興味を持つようになった私は、ある週末、植物の写真を撮るために、コオラウ山脈にあるワアヒラ・リッジという尾根に出かけた。尾根で花や木の写真を撮りながら、ふと10メートルくらい離れた木の枝をみると、緑色の小さな鳥がとまっていた。この尾根にたくさんいるメジロに似ているが、図鑑で何度も何度も眺めた、下にカーブしたくちばしが肉眼で確認できた。

間違いない、ハワイミツスイだ!

私は息を潜め、固唾を飲んで写真を撮った。緊張している私をよそに、鳥は私の存在をあまり気にしている様子はなく、その枝にしばらくいて、やがて飛び去った。

帰宅してさっそく撮った写真と図鑑を照らし合わせた。鳥は、確かにハワイミツスイ類の一種で、アマキヒという名前だった。アマキヒは、オアフ島以外の島にも生息しているが、例えばカウアイ島の個体群はカウアイ・アマキヒ、ハワイ島のものはハワイ・アマキヒと呼ばれ、それぞれが島単位での固有種である。

私が出会ったのはオアフ・アマキヒで、オアフ島の固有種だ。

また別の日には、同じ尾根で、アパパネという赤いハワイミツスイにも出会うことができた。

自分が暮らしている小さな島、そしてワイキキという世界有数のリゾート地がある観光の島オアフの、しかも街の喧騒から車で20~30分程度しか離れていない場所で、ちょっと山に入れば古来からいる美しい森の鳥たちがくらしていることに深く感動した。

以降、ハワイの野鳥と、野鳥たちを育むハワイの自然の魅力にさらにどっぷりとはまっていった。

﨑津 鮠太郎