も有名なハワイ語の単語であり、日本人にも言葉そのものはよく知られているアロハ。ハワイの日常的な挨拶の言葉で、いわゆる「こんにちは」という意味や、別れのときに「さようなら」という意味で使われる。

ハワイの人々は、挨拶の他に、相手に対する愛や思いやりを表す場合にもアロハを使う。例えばレストランで「私たちは最上の材料を使い、アロハを込めて料理します」とメニューに書かれていたり、車のドライバーに向けた標語で「アロハの気持ちで運転しましょう」などと言ったりする。

アロハには、調和、謙遜、我慢などのニュアンスもあり、ただの挨拶の言葉ではなく、人や自然に対して常に優しさや愛おしみを持って暮らす生き方や精神を表す言葉だといえる。この精神はアロハ・スピリットと呼ばれていて、ハワイで生まれ育った人たちの心の中に深く根付いていると私はいつも感じる。

ハワイの優しいドライバーたち

ハワイの暮らしのなかでアロハ・スピリットがよく言われるのは、車の運転についてである。

車を運転していて、小さな道から大通りに合流するときに、私が知る限り、アメリカ本土では大通りの車はなかなか間に入れてくれない。しかしハワイでは、多くのドライバーが親切に譲ってくれるのだ。このことは、ハワイの田舎で特に顕著である。ホノルルの街中では、観光客のレンタカーや、ハワイに来て間もない在住者の車やタクシーも多いため、運転者の「優しさ」はアメリカ本土とさほど変わらないかもしれない。

なお、入れてもらった場合には、手を上げて謝意を表すのがハワイでの通例で、これもアメリカ本土ではあまり見られない。このとき、親指と小指を立てた「シャカ」のサインを出す人も多い。

車の運転はほんの一例だが、ハワイの人たちの多くが、たとえ初対面の人に対してでも、まるで家族のような親しみをもって接してくれる。

ハワイ流「おもてなし」

先日、オアフ島で財布を落としたある男性の話が記事になっていた。

記事によると、男性が落とした財布は地元のある家族が拾った。家族は、親切にも財布の中の身分証明書に載っていた、何マイルも離れた住所まで届けたが、その住所はすでに古く、そこに男性は住んでいなかった。そこで家族は、男性が利用する銀行に行き、電話番号を照会した。しかし、その電話番号も古いもので、つながらなかった。家族はそれでもあきらめず、今度はグーグルで男性の名前を検索し、ようやく連絡が取れた。男性が家族をたずねると、家族は男性を歓待し、なんと夕食まで馳走してくれた。男性は、謝礼を渡そうとしたが、家族は頑なに拒んだという。

なんという素敵なアロハ・スピリットだろう。

いつも人の気持ちになって考え、人の痛みを自分の痛みとして感じ、また人の幸せを自分の幸せだと感じることができる優しさ。周りの人にも家族のような愛情をもって接する暖かいこころ。いたわり。これがアロハの精神だ。2020年東京オリンピック招致のプレゼンで流行語になった、日本の「おもてなし」の精神にやや近いものがあるだろうか。

私はホノルルで15年暮らしているが、上の話に似たようなエピソードを何度も聞いたことがある。そんなとき、カマアーイナ(在住者)たちはたいていこう言う。

「こんなことが起こるのはハワイだけだよ」

ハワイを訪れる多くの人がハワイに魅了される理由のひとつが、島じゅうにみちみちているアロハ・スピリットであることは間違いない。島の人たちのフレンドリーで暖かいアロハの精神に触れれば、ハワイへの愛情は一層深いものになるのだ。

ただし、ハワイのみんながみんなこのアロハの精神を持っているわけではないので、もちろん注意は必要だ。

﨑津 鮠太郎